突然だが冬の風物詩と言えば、人は何を連想するだろうか？

　人の数だけ答えはあると思うが、やはり冬の風物詩と言えば空からふわりふわりと落ちてくる氷の結晶、「雪」であろう。

　その雪は、ここ帝都にもしんしんと降り積もっていた。

　眼下に広がる銀世界は、例えるならば正に白い海。

　 「海はいいなァ……無理矢理だけど」

　雪化粧をしたその様も美しい、帝都に住む者でその名を知らぬ者などいないとまで称される大帝国劇場の屋根の上に立つ白いス−ツに赤いシャツ、牛柄ネクタイをきりりと締めたハイセンスな出で立ちの伊達男は一言そう呟いた。

　そう、ご存じ紐育日本大使館付武官にして謎の貿易商……もとい帝国華撃団月組隊長にして紐育華撃団月組隊長、加山雄一その人である。

　その手に握られているのは紐育で愛用していた白いウクレレではなく、渡仏経験もある彼の代名詞とも言える白いギターともう一つ、大きなボストンバッグだ。

　そして彼の視線の先には、せっせと荷物を帝劇内に運ぶ一団の姿があった。

　月組隊長の彼が動く時には、必ず何かがある。

　一体この帝都に何が起きるというのだろうか……？

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