闇と光




マリアは、クリスマス公演の稽古でステージに立つレニを眩しそうに見つめた。

レニは舞台の上で光り輝くものを持っている。
なのに、彼女は舞台から降りると…濃い闇を抱えていることにマリアは直ぐ様気付く。

それはアイリスや大神もいち早く感じているもので…。
しかし、二人が理解することが到底出来ない、深い闇をレニは持っている。



レニは闇。



でも、レニには一筋の光・希望を持っている。
だからこそ、その闇と対峙し…苦痛を感じる。


私がそう思うのは…レニに失礼かもしれない。
でも、レニには自分と同じものを感じずにはいられない。


この先、レニはその苦痛から逃れることは出来ないだろう。
でも、その苦痛を受け入れることは出来る。
レニはそれを、自分の中でだけで抱え込もうとしたが…レニは仲間に受け入れられ…そして、深く自分も受け入れた。


同じものを持っていただけではない。





「お疲れ様、マリア……何か悩み事?」

レニは不思議そうにマリアを見つめた。
どうやら、レニの事を考えているうちに、眉間に力が入っていたらしい。

マリアは直ぐに笑みを浮かべて、

「なんでもないわ。」

しかし、レニに誤魔化しは…きかない。


「隣、いい?」


返事を聞かずに、レニはマリアの隣へと座った。

マリアはそんなレニに温かさを感じつつも…今しがた考えていたことに、僅かに罪悪感に似たものさえ感じる。

「貴方は、いつからそんなに眩しくなったのかしらね。」
「えっ?」

レニはマリアの瞳を見つめた。

しかし、直ぐにその視線を逸らされた。

かなり至近距離だったので、驚いたのだろう。

俯いたまま、レニは微かに口を開く…。



「そんなの、わからない…。」




「ん?」
「ボクはいつまでも闇だと自分で思うよ。なのに、どうしてマリアはボクを眩しく感じるの?」
「貴方が闇を受け入れ、そして、貴方の持つ光を存分に輝かせたから。」

間髪いれずに述べたマリアの言葉にレニは顔をあげてマリアの瞳を見…。

「それじゃあ……マリアは?」
「えっ?」

「ボクにはマリアも眩しくてたまらない……うんうん。とても温かくて包み込むような光だよ。」

まさか、自分がそんなことを言われるとは思ってもいなかった。


「それは、貴方が私を受け入れたから。」

「ボクは…!」



マリアは何かを言おうとしたレニの唇に自分の唇を重ね…サッとはなした。

真っ赤になったレニの顔に……マリアは悪戯っぽく笑みを浮かべる。


“お互いに受け入れたから…貴方の光が私に光を灯してくれたの”