光と闇





大神にとって、彼女……レニの存在は光だった。


初めて会った時…レニは上から落ちてきたアイリスを受け取り…その表情は凛としていた。

それから直ぐ後、警報が鳴り……またレニは直ぐ様、戦闘へ赴く前の表情に変わる。

アイリスや…他の人と比べれば、読み取ることが難しい、その表情は機械に似てはいても…光のように瞬時に色が変わる。

その後、レニが感情を知ると…目まぐるしい変化を見せた。








大神にとって、レニは光。

しかし、大神はたまに…レニに闇と言う名の光を見る。






その表情を…同じ表情をする人物を大神はもう一人知っている。

それは同じ花組の副隊長、マリア・タチバナである。

マリアにそのことを話したら、僅かに何か意味を含んだ笑みを浮かべられて…こんなことを言われた。





「隊長は…私やレニのようにはならないでくださいね。」





大神には、マリアの言う…“自分達のようになるな”…その意味が分からない。





俺にとって、闇とは打ち払うことの出来るものだと思っている。


だが、彼女達を見ていると…それは…不可能だと思わせられる…。



俺は…何か見落とし……何か間違っているんだろうか。

俺は、彼女達を………レニの闇を打ち消すことは出来ないんだろうか。


コンコン…



大神は物思いに耽っていると、支配人室の戸が叩かれる音に我に返る。

「あぁ、入ってくれ。」
『失礼します。』

戸が開き、もちろん顔を出したのは彼女…レニ・ミルヒシュトラーセである。

「支配人、クリスマス公演の予算をまとめた資料を持ってきました。」

「あぁ、そこに置いててくれ。」



レニは大神と視線を合わせた後、すぐに机の上に資料を置き…踵を返してドアを見つめる。

「ねぇ、支配に……隊長。どうしてボクを…今回の公演の主役にしたの。」

レニはこちらを見ずに…そう質問した。


大神は暫く…そんなレニを見つめ、はっきりと述べた。

「レニが一番…光を表現できるからだよ。」


レニは大神を見た。

彼女の瞳には動揺が映っている。

そんなレニを見て、再度、大神はレニに言った。


「俺は、レニが光だと思ってる。でも、たまに光に似た闇を感じる。だからこそ、レニにこの役を演じて欲しい。光しか知らないよりも、闇を知っている人がどれだけ光を表現できるか…。それに、これは個人的なことだけど…この役で俺は舞台で光り輝くレニを見たいよ。」

レニは、動揺の色を浮かべた。

しかし、それは恥ずかしさからくるものであって…消して居心地の悪いものではない。


「ボク…みんなと頑張るよ。……貴方のために。」


レニの頬が朱色に染まり、大神は机から身を乗り出して……レニの唇に柔らかくキスをした。

「大丈夫、レニなら出来るさ。俺が選んだ君なら…。」



“…君は闇を打ち払う光を持っている…”